クロダイは棒ウキ、グレは円錐ウキという定説は昔から存在しています。円錐ウキが登場する前は玉ウキが用いられていましたが、棒ウキは連綿と使われ続けています。クロダイ釣りには棒ウキを使わなければならないという迷信は今でも信じられているのです。では、どうしてそのような迷信が生まれたのでしょう? そして、本当に棒ウキでなければ釣れないのかを考えてみました。
棒ウキにはどんなメリットがあるのでしょうか
単に棒ウキといってもいくつか種類があります。ここでいう棒ウキはオモリ負荷0.5号以上で全長が30㎝を超えるものを指しています。まずはその点を断っておきます。
ところで、 どうしてクロダイ釣りにこの棒ウキが使われるようになったのでしょう? 以前に少し触れたことがあるのですが、クロダイは繊細でずる賢く、非常に用心深いと信じられていました。そのため、ウキは感度を優先したものを使っていたのです。警戒心のない幼魚やよほど活性が高くない限り、魚は一気にエサを食べることはしません。口先でつついたりくわえてみたりして安全かどうかを試します。つまり、チヌでなくても前アタリは小さいものなのです。もっとも、小さな前アタリを表現できたからといってそれが釣果に結びつくかどうかは別問題です。
棒ウキのもうひとつのメリットは視認性が高いことです。細いながらトップは水面上に10〜20㎝は出ていますから、少々遠くまで流れても円錐ウキよりよく見えます。風の影響が大きいときはオモリで水面ぎりぎりまで沈めればいいのです(視認性は犠牲になりますが)。
操作性のよくないのがデメリットです
全長30㎝以上の棒ウキは視認性がいい反面、扱いづらいという弱点があります。棒ウキは立ってからでないと本来の性能を発揮できませんが、立ち上がるまで時間がかかります。仕掛けがなじんでからも波があると姿勢が安定せず、サラシの中ではまともに立つことすらできません。それにハリスが絡みやすく、初心者は往々にして絡んでいることに気づかずに釣りを続けて時間をロスしてしまいがちです。
ヘラブナ釣りを見ればわかるように、棒ウキは静水で使用するものです。堤防でクロダイ釣りをしている限り、棒ウキの弱点はそれほど気になりません。仕掛け絡みは使い慣れることである程度解消できます。似たような条件の湾内の磯でも十分能力を発揮できるでしょう。しかし、荒磯では通用しません。波やサラシの中では役に立たないからです。
クロダイ釣りに誘いは欠かせません
かつて、クロダイという魚は非常に用心深いからエサは極力自然な状態を演出しなければならないと信じられていました。しかし、先進的な釣り人の努力で、今ではそうではないことが確かめられています。自然の状態にあるよりも誘いをかけてエサに特異な動きを与えた方がクロダイの目を引き、ヒットするチャンスが明らかに多いのです。誘いのかけ方は条件や釣り人の感覚に頼るところが多く、これといったパターンはありません。とにかく、目立たせることが大切です。
ところが、棒ウキだと誘いをかけるたびに姿勢が崩れます。そして、立ち直るまで時間がかかります。その点、円錐ウキだと姿勢は安定しています。操作性に難があるという棒ウキの弱点はありません。条件の厳しい荒磯でクロダイ釣りを経験したベテランが湾内の釣り場に持ち込み、次々と成果を上げて円錐ウキはどんどん普及しているというのが現状です。
感度が鈍いという円錐ウキの弱点
棒ウキの最大のメリットは感度のいいところにあります。これは誰もが認めている事実です。それに比較すると円錐ウキの感度はかなり劣ります。1〜2㎝のトップの動きは表現できません。だのにベテランが円錐ウキを使う理由はなんでしょう? 答えは、そんな小さなアタリを知る必要がないからです。クロダイは貪欲で、執念深く、大胆です。一度目をつけたエサはどこまでも追いかけます。
一方で、クロダイの口は硬く、ハリ掛かりさせる場所は唇、ジゴク(カンヌキ=口の脇)、喉の奥しかありません。唇はやり取りの途中で外れる可能性が高く、ジゴクに掛かるかどうかは運任せです。確実にハリ掛かりさせるには飲み込ませた方がベターです。そのためには、小さなアタリなど気にせず、ウキが見えなくなるまで送り込みます。そして、竿先に乗ったところでアワせればいいのです。
もちろん、条件によっては早アワセした方がいい場合もあるでしょう。特に、クロダイがコマセに浮いた場合はその傾向が強く、なにがなんでも遅アワセというのは感心しません。
まとめ
棒ウキにも円錐ウキにも長所と短所があります。それを理解すれば「このウキでなければ」という決めつけは意味がないことになります(好みは別として)。サラシの中でも棒ウキで釣ることは可能だし、波のない堤防でも円錐ウキは十分役立ちます。
クロダイ釣りの場合、ウキの役目は仕掛けを飛ばし、潮に乗せて仕掛けを流し、サシエサのタナを確保し、そしてアタリをとらえることです。いずれも、棒ウキ・円錐ウキどちらでも不可能ではありません。これまで棒ウキしか使ったことがなければぜひ円錐ウキを試して、操作性のよさを実感してみてください。
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