いうまでもなく写真は二次元です。平面上にさまざまな世界を描いています。しかし、なにも意識せずに写すと「本当」の平板になってしまいます。そこで、撮影するときは前景、中景、遠景を意識します。すると、二次元の世界でありながら奥行きのある写真が出来上がります。平板な写真に比べてインパクトがあり、強い印象を与える写真になります。特に大事なのが前景です。とはいえ、ケースとして多いのは中景にメインの被写体を設定する場合ですから、前景があまり目立ちすぎてはいけません。では、どのように表現すればいいのでしょうか。それを解説してみましょう。
あるとないとでは大違い
① 前景のない写真
② 前景のある写真
中景はまったく同じで(フレーミングは多少変わっていますが)、前景がある写真とない写真を並べてみました。それが①と②です。どのような印象を受けるでしょうか。①は前景がなく、まっすぐ被写体に視線が向かいます。対して、②は前景がそれなりに大きいため最初にそこに目が向きます。しかし、そこからその先の被写体に視線が移動します。その影響で奥行きが感じられるのです。
③ 動きのある写真
それをもっと押し進めたのが③です。手前から奥に向かう動きが強く感じられます。本来は動きのない被写体なのに動きが感じられるという特徴があり、このテクニックはしばしば風景写真で用いられます。
ボカすか、パンフォーカスにするか
改めていうまでもなく、前景はメインの被写体ではありません。風景写真の場合は明確に分けることはできないこともありますが、ほとんどの場合、前景はメインではありません。主たる被写体に視線を導くものにすぎません。見る者の興味を引き、写真の世界に誘導するものです。
そう考えたとき、では前景はどのように写せばいいでしょうか。つまり、どのように表現すればいいかということです。
大きく分けて方法は二つあります。ボカすか、またはピントをしっかり合わせるかです。ボカすというのはそれほど難しくありません。絞りを開けて被写界深度を浅くすればメインの被写体にだけピントが合い、前後はボケます。ただし、日中に戸外で撮影する場合、絞りをいっぱいに開けると最高速でシャッターを切っても露出がオーバーになる可能性があります。その場合、色のバランスを崩すことなく光量をだけを抑えるNDフィルターの使用をお勧めします。また、最新式のカメラは1/8000秒の速度でシャッターを切ることができます。そこまで速ければF値1.4のレンズでも開放でシャッターが切れるチャンスは増えるでしょう。
F値とは
ここでF値1.4の説明をしておきます。カメラのF値とはレンズの明るさを示すものです。レンズの明るさと聞いて首をかしげる人もいるでしょうが、ご存じのようにレンズには絞りがあります。その絞りの最大値をF値と呼び、ズームレンズでは3.5〜4.5が標準です。特に、望遠系のレンズはこの数字が大きく、そのため速いシャッターを切りづらいという傾向があります(絞りを開けると入ってくる光の量が多いため、速いシャッターが切れるのです)。
ズームはレンズの数が多く、どうしても暗くなりがちです。それに比べて単焦点レンズはレンズの数が少なく、1.4、さらには1.2という明るさを持つタイプもあります。そして、ここで注目してほしいのは、明るいレンズは絞りを広く開けることができるため被写界深度を浅くできるという点です。被写界深度が浅いと前後にはピントが合わず、それはつまりボケるということです。いや、ボケやすいと表現しましょう。3.5〜4.5程度ではそれほどボケなくても、1.4や1.2ではきれいにボケます。近年はズームレンズを使用する機会が圧倒的に増えています。それだけ便利で使いやすいというわけです。しかし、ことボケに関しては単焦点レンズの方がはるかに有利です。
すべてにピントを合わせるパンフォーカス
もう一方のパンフォーカスとはすべてにピントを合わせることです。前景にも中景にも遠景にもピントが合います。そんなことができるのかと思うかもしれません。答えは被写界深度にあります。この用語はたびたび出てきますが、写真を撮るうえでは非常に大切です。この際、完全に理解しておいてください。
さて、ボケを出すには絞りを開き、被写界深度を浅くしました。パンフォーカスにするにはそれと反対のことをします。絞りをいっぱいに絞って被写界深度を深くするのです。通常のレンズでは最大絞り値は22です。しかし、マクロレンズは32、さらには45というのもあります。いうまでもなくマクロレンズは近接撮影用です。しかし、焦点距離が近いと被写界深度が浅くなり、狭い範囲でしかピントが合いません。ボケを利用するのならまだしも、ブツ撮りなどで広い範囲にピントを合わせたいときこの最小絞りが役に立つのです。もちろん、いっぱいに絞れば光量が不足しますからシャッター速度を遅くしなければなりません。ブレを防ぐには三脚が欠かせないところです。
もっとも、それでは動いている被写体を撮影することはできません。そこで、もう一つのパンフォーカスの方法を紹介しましょう。それが広角レンズを使うことです。このレンズは被写界深度が深く、より広い範囲にピントが合います。逆に、望遠レンズは被写界深度が浅く、バックがボケやすいという特徴があります。前景から中継、さらに遠景までピントを合わせたいときは広角レンズを使いましょう。
前景になにを使うか
画面すべてにピントを合わせる場合は前景になにを持ってくるかが大きな課題となります。インパクトが強いと被写体の存在を脅かします。といって、意味のないものでは見る人を引き込むことはできません。興味を抱かせて視線を誘導するだけのパワーがなければいけません。その一つが前述した③の写真です。手前から奥に誘導するものがあり、視線は確実に中景に向かいます。
もう一つの考え方として、パターンの有効活用があります。ここでいうパターンとは規則的に繰り返される模様という意味です。人工的な造形物でもいいし、自然が作るものでも構いません。面白いものなら細かく描写すればさらにインパクトは強くなります。
まとめ
視界の一番手前にあるものには嫌でも目が引かれます。写真ではそれが前景になります。それをどのように利用するかによって写真の魅力は大きく変わります。ここではその利用方法の一端しか紹介できませんでしたが、前景の使い方はまだまだたくさんあります。いろいろ試してみてください。
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