写真や絵画にはしっかりした構図が必要だといわれています。構図の意味は「配置」です。画面に存在するさまざまな要素をどのように配置すれば効果的かを考えるものです。そうはいっても構図の概念は漠然としていて、非常にわかりづらいというのが現実です。そこで、わかりやすくするため構図をいくつかのパターンに分けて説明したいと思います。今回はトンネル構図と額縁構図を取り上げてみました。
縁があると画面が締まります
数十年前の話になりますが、写真の周囲に縁をつけるのが大流行したことがあります。印画紙よりも小さい写真を焼き付け、それに手書き風の縁をつけるのです。コンテストや公募展では大半の作品が縁取りされていました。
やがてこのブームは去り、わざわざ縁取りすることはなくなりましたが、縁取り効果を生かした構図は今でも存在しています。それがトンネル構図と額縁構図です。どちらもよく似ていますが、わかりやすくいえばトンネルはひとつ、額縁はふたつ以上と覚えておけばいいでしょう。
トンネルから外を見た構図がトンネル構図
トンネル構図とはその名称の通り、トンネルの中から外側を見たような構図です。トンネルの中は暗く、それでいて近く、外は遠くて明るいのが通常です。そのため、トンネルの一部を画面に取り入れると周囲に黒い縁ができ、それが画面全体を引き締めることになります。同時に、明るい外界とのコントラストが生じ、視線は自然にその明るい部分に導かれます。
いうまでもなく、外界の被写体はメインになるものではなくてはなりません。多くの場合、画面の中では最も目立つ色になり、ピントをしっかり合わせてディテールをはっきりさせます。
トンネル構図にはもうひとつの効果があります。全体をストレートに表現せず、一部しか見せないことで安定感のない印象的な写真になるのです。別の記事で紹介していますが、全体を見せずに一部だけ切り取るという手法もあります。トンネル構図はこの手法とも関連しているのです。
構図には必ずしもトンネルを使う必要はない
トンネル構図が生まれたのは実際にトンネルの中から撮影したからかもしれません。しかし、現在はさまざまに応用されています。現在は必ずしも黒い縁を使ってはいません。中間調で周囲を囲い、ボカすのです。メインの被写体にピントを合わせるのは同じです。逆に、周囲を明るくしてセンターを黒っぽくするという作品も登場しています。黒っぽくするといっても比較の問題で、周囲よりも暗いという意味です。この場合、望遠レンズの圧縮効果を利用するとうまく表現できます。
圧縮効果とは近景・中景・遠景が接近して見えることです。つまり、遠近感が希薄になり、二次元の世界のように見えるのです。反対に、広角レンズを用いると遠近感が強調されます。覚えておくと役に立つでしょう。
額縁構図とは被写体を額縁で囲むこと
数ある構図パターンの名称はほとんど過去のカメラマンが独断で命名したものです。広く普及して定着したものもあれば、カメラマンによって異なる名称もあります。このトンネル構図と額縁構図をひっくるめてフレーム構図という人もいます。フレームとは枠という意味で、被写体を枠で囲むと思えばわかりやすいでしょう。
一般に、トンネル構図と額縁構図の差はフレームの大きさにあります。トンネル構図では画像全体をフレームで囲いますが、額縁構図ではもっと小さく、画面にいくつものフレームが存在するケースもあります。ただ、トンネル構図と同様に周囲は暗く、フレーム内は明るく視線を導きやすいというのは変わりません。フレームに用いるのは窓が一番多く、他に玄関や門などの人工物が主体です。
額縁構図のもうひとつの意味
穴があると覗きたくなるのは人間の本能といってもいいでしょう。特に、「覗くな!」という貼り紙があったりすると、90%以上の人間は覗きたくなるそうです。額縁構図はこの「覗きたい」という欲望を満たしています。窓という額縁を想定してみましょう。自分は部屋の中にいてそこから外界を覗いているという状況です。自分がいる世界と外界とは明らかに別物です。第三者として外の景色を眺めていると思えばいいでしょうか。
メインの被写体が頼りなく思えても、額縁で彩ると不思議に魅力的に見えてきます。
額縁構図の応用
トンネル構図と同じように、額縁構図もさまざまなバリエーションが生まれています。代表的なのがリフレクション(=反射)です。例えばカーブミラーです。ミラーというフレームで囲まれたのは完全に別世界で、まさしく額縁構図といえます。ただし、ミラーに写ったものがメインの被写体である以上、ディテールを克明に表現しなければなりません。ミラーが汚れていたりキズが入っていたりするとそれは難しくなります。そのため、リフレクションを利用できるミラーには限りがあります。
小さなものではビー玉も利用できます。条件によっては水溜まりも使えます。
まとめ
構図すべてに関わることですが、構図とはあくまでも基本です。基本に従わなくてもいい写真はいくらでも撮れます。つまり、構図にこだわる必要はないということです。では、なんのためにこのような記事を作成したのかというと、困ったときの対処法という目的です。カベにぶつかったとき、気に入った被写体の表現方法がわからないときなどこの構図のパターンを思い出してください。トンネル構図、額縁構図はわかりやすく、使いやすい構図のひとつです。
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