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写真のコツ vol.1

写したいものを伝えていますか?

· カメラ

人間の目は実に便利にできています。見たいものをロックオンするとその周囲はまったく気にならなくなるのです。どんなにゴチャゴチャしていても、目はしっかりと対象物を捕らえています。しかし、カメラは正直です。あるがままを忠実に受け止めます(100%忠実ではありませんが)。その結果、第三者が見たとき、なにを写したかったのかさっぱり分からないという事態を招きます。写真はカメラマンの意志を伝えるものです。伝わらなければ写真の価値はありません。というわけで、被写体をはっきり伝えるためのテクニックを解説してみましょう。

ターゲット以外は画面に入れない

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まず上の写真をご覧ください。これがなにを写したものかが分かる人はほとんどいないでしょう。実はトンボが被写体なのです。センターの少し右寄りに上を向いた状態で止まっています。トンボを目立たせるためアップにして周囲を大幅にカットしたのが下の写真です。

 

このトンボはハッチョウトンボという名で日本一小さいといわれています。オスは成熟すると真っ赤になる(写真はメスです)のですが数は少なく、なかなかシャッターチャンスに恵まれません。

このように、被写体をできるだけ大きくして周囲をカットするというのは写真の基本です。とはいえ、ネイチャーフォトで周囲をカットするにはさまざまな制約があります。ポートレートやスナップでは近づくことで被写体をアップにできます。しかし、動物や昆虫、野鳥は近づくと逃げてしまいます。そのため、望遠レンズが不可欠となります。スポーツ写真や鉄道写真もこの点は同様です。さらに、被写体が小さい場合は望遠に加えてマクロ機能も必要です。いわゆる望遠マクロというレンズがなければ被写体をアップにはできません。

バックを暗く落とし、被写体を浮き上がらせる

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この花はサギソウという、まるでサギが飛んでいるような形をしています。上の写真でも被写体は判断できます。花弁はやや飛び気味ですが、光は全体によく回っています。しかし、下の写真と比較すると一目瞭然です。画面を見たとき、上の写真は一瞬目が泳ぎます。どこを見ればいいかが瞬時には判断できないのです。その点、下の写真は自然に目がサギソウに向かいます。コントラストが強く、ターゲットは明らかに浮かび上がっています。

上の写真と下の写真の撮影方法の違いは明らかに露出にあります。被写体であるサギソウは完全に白ですから、この場合はかなり絞り込んでも問題はありません。デジカメの場合は絞り補正ができますから、マイナス0.3、マイナス0.7、マイナス1とどんどん絞り込んでみましょう。デジカメはその場でおおまかなところはすぐ確認できますから、ある程度納得できるまで試してみることです。昆虫や動物・野鳥と違って植物はじっくり腰を据えて撮影できます。

被写界深度を浅くして背後をボケさせる

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被写界深度とは分かりやすくいえばピントが合う範囲のことです。カメラのピントは一点にしか合わないわけではありません。いや、実際はそうなのかもしれませんが、人間の目では判断できないほどのほんのかすかなボケにすぎず、写真の世界ではピントがしっかり合っているといっていいでしょう。

 

最上部の写真を見てください。レンズにはこのような表記があります(分かりやすくするため古いレンズを使っています)。なんのためのものだろうと思っていた人も多いのではないでしょうか。中央の細長いオレンジの菱形に注目してください。これは現在、3mの位置にある被写体にピントが合っていることを示しています。そして、オレンジの菱形の左右に4、8、16、22という数字が見えます。これは絞り値です。つまり、絞り16では約2.7mから約3.8mまでピントが合いますという意味なのです。絞り4では3m前後しか合いません。

 

ここからなにが読み取れるかというと、絞れば絞るほど被写界深度は深くなり、ピントが合う範囲は広がるということです。シャープなピントがほしければ絞った方が確実というわけです。逆に、絞りを開けるとターゲットにしかピントは合いません。前後はボケてしまいます。それを利用してバックのゴチャゴチャを単純にしたのが真ん中の写真、最下部の写真です。真ん中の写真はオオイヌフグリ、最下部の写真はムラサキセンブリという花ですが、こうすれば被写体はくっきりと浮かび上がります。

 

では、どうしたらこのような撮影ができるのでしょうか。方法は二つあります。マニュアルモード、またはAモードにすればいいのです。マニュアルモードではシャッター速度と絞りを自由に設定することができます。自由といっても被写体を取り巻く光の量(明るさです)は決まっていますから、絞りを開けるとシャッター速度は早くしなければなりません。逆に、絞りを狭めるとシャッター速度は遅くなります。そういう法則に従わなければならないのです。

 

Aモードは絞り優先という意味です。最初に絞り値を決めると自動的にシャッター速度が決まるというモードです。ですから、バックをボカしたければこのモードにして絞りを開いてやればいいのです。ただし、日中のドピーカンで非常に明るい状況では絞りを開放にすると光量がオーバーするケースがあります。そのカメラが持つ最も早いシャッターでも追いつかないのです。ISO(感度)を100まで落としていればそれより下げることはできません。

 

そんなとき便利なのがNDフィルターです。NDとはニュートラル・デンシティの略で、直訳すれば「偏らない濃度」ということになるのでしょうか。機能としては、色に影響を与えることなく光量を減らします。つまり、これを使えば露出オーバーさせることなく絞りを開けることができるのです。真昼でも長時間露出ができるので使い道は多いのですが、その件に関しては稿を改めて説明しましょう。ともかくも、絞りを開けて撮影するケースではぜひ準備しておきたいフィルターです。

まとめ

被写体を浮き立たせるための方法を三通り紹介しました。周囲をカットする、バックを暗く落とす、背景をボカすというのがそれですが、それぞれを単独で使用するのではなく、複合技を用いるとさらに対象ははっきりします。ここでは触れませんでしたが、バックを白く飛ばして被写体を暗く見せるという方法もあります。使い方は難しい部分もありますが、うまく表現すれば素晴らしい効果を出す場合があります。ぜひ自分なりの表現方法を見つけてみてください。

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